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出版業界の実体、トラブル

書店に並んでいるたくさんの本、売れ残ったらどうするか? 考えたことのある人は少ないでしょう。けれど毎週新しい本が発売されるわけですから、日に日に本の種類が増えて、すぐお店に入りきらなくなるはずですよね。 実は、売れ残った本は出版社に返品されているのです。これを返本(へんぽん)といいます。返本には手数料がかからないので、書店は次々新しい本を並べ、売れそうにないものはすぐに返本するのが通常です。書店がというより、むしろ出版社サイドがそれを主導していると言った方が正確かもしれません。出版社が売りたい、ブームになりそうな本を全国へ大量に配本(はいほん)して、目論見がはずれたらさっさと回収する。その繰り返しが、今日のスタンダードな出版社の商法です。なお、返本された本はよほどの理由がない限り廃棄処分されます。
返本率は書籍で40%以上となっており、実に半分近くの本が返品され、そして廃棄されるという、出版業界の異常な実体があります。この仕組みは日本独自のものであり、その成立をさかのぼってみると、50年ほどの歴史をもつ「委託制度」が問題の中心に浮かんできます。

戦前は書店に関しても他の小売業と同様、小売店が商品を仕入れるのが通常でした。つまり書店が本を買い切り、在庫して販売していました。書店の主導で、良いと思う本をお店に並べていたのです。



※1998年の映画「ユー・ガッタ・メール」。アメリカでは現在でも、店主のセンスで品揃えを固めた専門書店が数多く存在する。


一方著者の側にとっても、出版をとりまく状況は今とまったく違いました。戦前は本を出す手段は自費出版しかなく、自作を流通させたい人は出版社≒印刷屋にお金を支払って出版する、ただし売れるかどうかはすべて内容次第という考え方が一般的でした。著者は自らの責任で出版し、書店もまた自らの責任・目利きで本を仕入れるという文化があったのです。

変化が起きたのは戦後、出版社らが印刷・流通・在庫のリスクを負うかわりに、高い利益配分を取るという「委託制度」が生まれた後です。日本で独自に発達したこの「委託制度」によって、出版の業界・市場は大きく拡大しました。しかしこの制度によって出版社は、徹底的な利益追求に傾倒せざるを得なくなったのです。
もはや良質な作品・作家を育て、市場との橋渡しをするという、文化の牽引者たる側面は失われました。発行すればある程度の売れ行きが見込めるような話題先行の作品ばかりが作られ、他社でヒット作を生んだ作家の引き抜きが横行し、新人作家は業界内の知人ばかりが起用されるという、打算的で閉鎖的な業界へ変化しました。近年は制度そのものが疲弊し、弊害が大きくなっているのはみなさんもお感じのことでしょう。編集者に"金づる"扱いされた作家が自らのブログで出版社を告発するトラブルや、作家の引き抜きにまつわる出版社同士のトラブルなどを目にした方もいると思います。詐欺と謂れのない中傷を受けたりする出版社もありました。
実は出版業界の制度疲弊については30年も前から識者らによって議論されてきたのですが、ここにきていよいよ破綻の二文字が浮かんできたと私は感じています。
現に、倒産や、業務縮小などをしている出版社は少なくないです。

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